「なんで俺だけがこんな目に………」
結婚して25年間、妻の不倫の果てに熟年離婚。仕事でもトラブル続出。
そんな一度全てを失った男・結城ナオキ(48歳)の起死回生の物語の後編。
前回のお話はこちら▶▶前編「不倫の果てに熟年離婚、一度全てを失ったオトコ
立て続けに不幸に見舞われたオトコの起死回生劇
精神の限界
「この前辞めた広報の吉田さんですが……Twitterでうちの悪口を拡散しているようです……」
Twitter?拡散?わけがわからない。
この前から……なぜ、俺だけがこんな目に。
”なんかこの辺で切ってもいいかもしれない”
吉田の投稿を見ると、自分の残業時間や休職時の上司の対応などの話をメインにした暴露だった。
我が社の取締役が社長の一族なことにも言及されていたことが引き金になり、社長の怒りは何をしても収まらなかった。
会社に残っている同僚や先輩などを通じて吉田に連絡を試みたが、どれ一つとして返信は返ってきていない。
電話はずっと鳴り止まず、ビルの外にはマスコミやクレーマーが溜まり始めている。
「いいか、1週間以内になんとかしろ。収まらなかったらお前と広報部の社員は全員クビにしてやる!」
『社長!広報部は関係ありません!』
「うるさい!連帯責任なんだよ!お前も社員も代わりなんかいくらでもいるんだからな!」
そう言い残すと社長は会社を出て行ってしまった。
***
誰に相談できるわけもなく、マスコミの取材やクレーマーの処理に疲れ果てて家に帰ったが、もちろん誰もいなかった。
ふと気がつくと、今日会社のアカウントに連携してもらったTwitterの通知でスマートフォンが埋まっていた。
その下には「離婚届は?」とだけ書かれた妻のメッセージ。
もう守る家族もいない、この家がなくなったところで息子は困らないだろう。
自分が死んで、保険金が入ればローンと息子の学費くらいは───
『限界だ……』
無意識にメッセージアプリをタップすると、常務からの心配したメッセージの上に紹介してもらった占いが目に留まった。
『uraraca電話占い……』
もうこの際誰でもいい、話を聞いて欲しい。
アクセスした時たまたま上の方いた占い師へ電話をかけ、今までの経緯と関係ないが離婚の話まで捲し立てた。
「なるほど、あなたは最近二度裏切られているわけですね。」
『……いわれてみればそうですね』
「吉田さんですが、あなたからコンタクトを取ることもできるのでは?」
そう、昔休日に会社のイベントがあったとき、用事があって吉田と連絡先を交換した。
今回の件でずっと引っかかってはいたものの、電話をしても罵られるのではないかと思って、黙っていただけだ。
『もちろん、連絡先は知っていますが……』
「今回の炎上についてはあなたにとっての試練です。傍観していてもいずれ落ち着きますが、あなたやあなたの部下はそれなりのダメージを負うでしょう。もしあなたが守りたいと思うのなら、今動かなくてはいけません。」
『私が、吉田に……』
「吉田さん、あなたが思うほど強い動機で動いているわけではないようです。
子供が火遊びをしていたらびっくりするほど大きな火事になってしまった、というイメージでしょうか。
謝るきっかけとなる出来事を探しているんです。」
お礼を言って電話を切ると、最近になかったくらい気持ちが晴れ晴れしていることに気づいた。
信じてみるか、占い。
解決の糸口
翌日、昼になるのを待って吉田へ電話をかけた。
1回目で出るとは思っておらず、油断しながら呼び出し音を聞いていると、なんと吉田が電話に出た。
「部長……ですか……?」
『吉田!大丈夫か?急にすまん。』
「すみません、本当に、本当にそんなつもりじゃなかったんです……」
吉田は電話をとるなり泣きじゃくり始めた。
なんとかなだめて話を聞いてみると、占い師が言っていたこととほとんど同じだった。
転職活動がうまくいかず、趣味の動画配信をやろうとしてうちの会社に在籍していた時のことを思い出したようだ。
もしこのツイートの宣伝効果で動画の方の再生数が伸びたら広告で稼げる、と思ったがとんでもないことになってしまった。
どうしたらいいのかわからない、と泣き続けている。
『わかった、どうすればいいのか一緒に考えよう。』
「ありがとうございます……」
その後、広報部の部下たちや吉田と相談し、謝罪文の掲載などを行って騒動は徐々に鎮火していった。
「炎上した暴露を上手くとりなした会社」としてSNSで広く拡散され、講演の依頼まであったことで社長の機嫌はなんとかおさまった。
変化と予想できない未来
そして、私はというと……。
このトラブルを通して、みんなと打ち解けられた気がする。
その筆頭が吉田というところが少し解せないが。
吉田からのメッセージ「部長!今日夜ご飯どうするんですか?この前言ってた焼き鳥連れてってください♪」
ちょっと気安い父親代わりみたいな気持ちなんだろうか。
メッセージの返信に困っていると、あの占いの先生からフォローメールというものが来ていたのに気付いた。
“本日はありがとうございました。お仕事のトラブル、うまく解決するといいですね。
また、あまりご興味がなかったかもしれませんが、年下の女性から好かれやすい星をお持ちなので、
もし恋人などできたらまたご相談くださいね。”
もしかして恋愛、なのか?