前回のお話はこちら▶▶「前編「30過ぎて独身はどこが悪いの?」10年ぶりの同窓会をぶち壊されたオンナ」
「及川さん、急にごめん。五十嵐です。」
連絡先を知らないはずの五十嵐からのLINE。
『五十嵐くん、びっくりした!どうしたの?』
返信するとすぐに既読になり返信がきた。
「あの後、及川さんのこと探したんだけど、いなかったから
幹事に連絡先聞いちゃったんだ、ごめん」
『全然大丈夫だよ、突然だったから少し驚いたけど』
「あいつのいったこと気にしないほうがいいよ。あの後、他の子にも絡みに行ってたから」
五十嵐くんに、アイツに言われたことでショックを受けて早く帰ったということを悟られたくないのと
アイツに言われたことを思い出して、苛つきが蘇ってきた。
『全然気にしてないから大丈夫、それより何か用?ちょっと忙しくて』
ユリはそんな苛立ちから、つい五十嵐にも強くあたってしまった。
「ごめん。ううん、気にしてないならいいんだ。忙しいとこごめんね。」
その返信にスタンプだけ返して会話を終わらせた。
『(五十嵐くんは、高校時代からとても優しかった。今回も本当に心配して連絡してくれたはず)』
でも、その優しさが、この時のユリには、痛かった。
午前2時の決意「運命を引き寄せる」
数日後、あの同窓会以来、自分の中のモヤが晴れずにいる。
時計は午前2時をまわるというのに中々寝付けない。
ユリは何気なく、SNSを開いてみると、目に止まったのは「1人で悩まないで」という電話占いの広告。
『電話占い…?占いかぁ。最近やってないなぁ』
実は、占いは結構好きだったユリ。
会社の同僚や友達の間で話題になっている占い師の鑑定を受けに行ったりしていたが、コロナになってから中々足を運ぶことも少なくなっていた。
「電話占いかぁ、やったこと無いなぁ」
電話占いは初めてだけど、誰かにこのもやもやとした気持ちを相談したかった。
サイトでオススメされている「夏目(なつめ)先生」という方が鑑定受付中だったので相談してみることに。
「はい、こんにちは。夏目です。よろしくお願いします」
『こんにちは』
「今日はどうしましたか?」
『実は…』
ユリは夏目先生に同窓会での出来事を一部始終伝えた。
「そうだったのね、デリカシーのない人っているのよね。
ユリさんは、自分が惨めに思えてっていうけど、そんなことないわ。あなた、とてもステキな女性ですよ。私にはわかります。」
夏目先生の優しい声色を包み込むような鑑定にユリの目に涙が溢れた。
『(普段占いで泣くことなんてないのに…)先生、私って結婚できるんですか?それともこのまま独身なんですか?』
「いいえ、結婚できる運命をしっかり持っているから、あなた自身が望むなら結婚できますよ。
ただ、あなた自身がネガティブになってしまって、意地をはってしまうと運命の扉を塞がってしまうこともあるわ。
素直で、かわいい女性になることを恐れないで。とにかく素直になること。
そうすれば、恋愛のほうも直近、大きく動きますよ。今年中の結婚もありえるわね。」
『え…でも、彼氏もいないのに?』
「うん、大丈夫ですよ。でも、大切なのは貴方自身が「結婚して幸せになる」という強い気持ちをもつことが大事、
自分が結婚できないとか幸せをつかめないとか、そういう気持ちは一切捨ててね。」
『幸せになる、ですか?』
「そう、しっかりとあなた自身の幸せはどんなものなのかを思い描いて。あなたに想いを寄せる運命の相手が引き寄せられるから」
正直、半信半疑の気持ちだった。
直近の自分にとって結婚という言葉が、現実味がなくて、想像すらできなかった。
でも、私自身、結婚だけが幸せじゃないという気持ちの反面、結婚したいという想いが強い。
だからこそ、同窓会での出来事に深く傷ついたのだ。
たとえ気休めの占い結果だったとしても、自分の運命を信じてみたかった。
「自分の運命を引き寄せたい、幸せになる」と自分自身に言い聞かせた。
思いもよらぬ恋の急展開
「幸せになる」そう自分に言い聞かせてから、2週間がたった。
ーピロリロリロリン、ピロリロリロリン
仕事も終わって家で最近ハマっているドラマを見ているとLINE電話の通知音。
相手は同窓会で声をかけてきた五十嵐だった。
ユリは、前回同窓会のこともあるし、嫌な返信をしてしまったから、正直気まずさを感じながらも、応答ボタンを押して電話にでた。
「急にごめん、今大丈夫?」
少し緊張気味の五十嵐の声。『うん、大丈夫だよ』とユリが答えると…
「今度一緒に映画でもどうかな…?」
『え!急にどうしたの?』
「この前の同窓会さ、本当はもっと及川さんと話したかったんだ。…駄目かな…?」
『(五十嵐くん自身はとても優しくていい人。まだわからないけど、一歩踏み出したら何か変わるかもしれない)』
“素直で、かわいい女性になることを恐れないで”
――――――夏目先生の言葉が頭をよぎった。
『(かわいい女になってみるか)』
『うん、映画いこっか!見たい映画あったんだよね』
その後、何往復かやり取りして五十嵐くんとユリは週末に映画を見に行くことに。
****
映画の後に食事に行って、懐かしい思い出話しで盛り上がった。
ユリは、久しぶりにデートらしいデートを楽しんでいた。
気がつけば、ラストオーダーの時間。
『わ、もうこんな時間…、そろそろ、出ようか!』
ユリが時計に目をやり、そう伝えると、五十嵐が不意に真面目な顔になりユリを見つめた。
「実はさ、高校の時、及川さんのこと好きだったんだよね」
『…そうだったの!…全然気が付かなった』
まっすぐに見つめられ、思わず目をそらしたユリ。
すると、五十嵐は空気を和ませるように少し笑いまじりに答えた。
「そうそう…!バレないようにしてたから。…でも、あの頃告白してたらどうなってたんだろうな」
『ふふ、何か照れますね…でも、嬉しいかも』
普段のユリなら、素直に口にしないような言葉。「嬉しい」と伝えてみた。
「今日及川さんと過ごして、すごい楽しかった。及川さんは全然変わってなくて、あ!いい意味でね」
『うん!私も楽しかった!ありがとう』
お互い照れくさそうに笑いあったが、再び五十嵐は真面目な眼差しでユリをまっすぐ見つめた。
「再会して、すぐにこんなこと言うのもって感じかもしれないけど、俺と前提に付き合ってくれないかな…?」
『え…!』
突然の告白に驚きを隠せないユリ。
「急で驚いたかもしれないし、信用できないかもしれないけど、本気なんだ。
今日、ゆっくり話してあの頃を変わらない、まっすぐで、がんばり屋の及川さんのこと近くで支えたいって思ったんだ」
ユリは、五十嵐の告白に素直に嬉しいと思った。
久しぶりの恋愛、恋に臆病になっていたユリは、少し戸惑う気持ちもあったけど。
この「嬉しい」という気持ちにしたがっていいのかもしれないと思っていた。
『ちょっと急でびっくりしてるんだけど、嬉しい。交際を前提に徐々に仲良くしていけたら…、よろしくお願いします。』
「本当に?!うん!全然それでも、及川さんが良いと思ったら段階で、恋人になってほしい。ありがとう。」
嬉しそうな五十嵐を見て、久しぶりの恋の始まりに胸がときめいた。
*****
半年後…
「隼人~!早くして、遅れちゃうよ」
「ごめん、ユリちゃん」
五十嵐こと隼人とユリは、二人の結婚式が行われる式場に入っていった。
素直になることを恐れないで
それなりに経験のあるアラサー女子、素直になることって実はとても難しかったりします。
でも、自分自身を否定したり、ネガティブな感情にとらわれることは、あなた自身のポテンシャルや本来もつ幸せになれる運命から遠ざかってしまうことにもなります。
しっかり自分にとっての幸せとはどんなものなのか?想像してみて下さい。